お世話になります。はいさび です。
先物取引と似て異なるもの…「オプション取引」。
今回は「プレミアム」について学びます。
①プレミアムは、「本質的価値」である原資産の価格、権利行使価格と「時間的価値」であるボラティリティ(価格変動率)、権利行使期日(SQ日)までの時間、金利(金利や配当)をもとにして計算される
②本質的価値は、損益の観点からみると「イン・ザ・マネー(ITM)」「アット・ザ・マネー(ATM)」「アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)」の3つに分けられる
③満期日までの時間が長ければ長いほど、(原資産の)価格が大きく動く可能性があるので期待感が大きくなり、時間的価値は大きくなる(満期日には、オプションの時間的価値はゼロになる)
④時間的価値を決める要素のひとつである「ボラティリティ」には「ヒストリカル・ボラティリティ(HV)」と「インプライド・ボラティリティ(IV)」がある
オプション取引とは?

- オプション取引は、特定の商品(原資産)を、将来の決められた日(期日)に、現時点で取り決めた価格(権利行使価格)で「買う(売る)権利」を売買する取引
- 「買う権利」を「コール・オプション(コール)」、「売る権利」を「プット・オプション(プット)」という(オプションの種類は「コールの買い」「コールの売り」と「プットの買い」「プットの売り」の4種類がある)
- オプション取引は「権利を売買する」取引なので、オプションの「買い手」は、コールでもプットでも権利を「行使」するか「放棄」するかを自由に選択できる
- オプションを買う場合、「買い手」は「売り手」に「プレミアム」を支払い、「原資産を権利行使価格で買う(売る)権利」を買う(証拠金は不要)
- コールの買い手が見込める利益は(理論上)無限大となり、プットの買い手が見込める利益は(理論上)原資産の価値がゼロになるまで増大する
- 先物取引もオプション取引もレバレッジ効果がある
- オプション取引では「買い手」は権利を「放棄」すると、損失はさいしょに支払った「プレミアム」分だけで済む(相場が予想とは反対に動いたら、権利を放棄して損失を回避することができる)
- 「売り手」は、さいしょに「プレミアム」を受けとるかわりに、買い手の意思に従う(権利行使に応じる)義務を負うことになる(証拠金が必要)
- 「売り手」の利益は「プレミアム」が上限だが、損失は大きくなる可能性がある
- 「買い手」が権利行使しなければ(放棄すれば)「プレミアム」は「売り手」の利益になるが、「買い手」が権利行使して大きな利益を得た場合は「売り手」は一気に大きな損失を被ることになる
プレミアム(オプション料)とは?



「本質的価値」とは、オプションの権利行使をおこなったときに得られる価値のこと。
「時間的価値」とは、将来の価格変動に対する期待値のことです

「プレミアム」は、「本質的価値」である原資産の価格、権利行使価格と「時間的価値」であるボラティリティ(価格変動率)、権利行使期日(SQ日)までの時間、金利(金利や配当)をもとにして計算されます。
本質的価値とは?

「本質的価値」は損益の観点からみると「イン・ザ・マネー(ITM)」「アット・ザ・マネー(ATM)」「アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)」の3つに分けられます。
「イン・ザ・マネー(ITM)」とは、今、権利行使をおこなった場合、利益を得られるプラスの状態(本質的価値がプラス)のことです。

「プット」の場合、今の(原資産の)価格が権利行使価格よりも低い状態にあるときがプラスの状態です
「アット・ザ・マネー(ATM)」とは、今、権利行使をおこなった場合、得られる利益がゼロの状態( 今の(原資産の)価格=権利行使価格であり、本質的価値がない)のことです。

「アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)」とは、今、権利行使をおこなった場合、損失が出るマイナスの状態(本質的価値がマイナス=本質的価値がない)のことです。

「プット」の場合、今の(原資産の)価格が権利行使価格よりも高い状態にあるときがマイナスの状態です
権利行使価格によって、権利行使をしたときに得られる利益の大きさが変化します。


逆に、「プット」の本質的価値は、権利行使価格-今の(原資産の)価格、
…これがゼロ以下ならば、そのオプションには本質的価値がなく、時間的価値しかないっていうことだね。
ところで、時間的価値ってどういうこと?
時間的価値とは?

時間的価値とは、将来の価格変動によってオプションの価値が高まるかもしれないという期待感のことです。
満期日までの時間が長ければ長いほど、(原資産の)価格が大きく動く可能性があるので期待感が大きくなり、時間的価値は大きくなります。


時間的価値は、はじめはゆるやかに減少していき、満期の直前になると急激に減少するという特性(「タイムディケイ」といいます)があるので、買い手にとってはリスクとなり、売り手にとっては有利になるんです

…ということは、満期日に「イン・ザ・マネー」になっていない場合は価値がゼロになっちゃうっていうこと!?

さらに、もうひとつの時間的価値を決める要素として「ボラティリティ」というものがあります(ボラティリティは「ボラ」ともいわれます)
「ボラティリティ」とは、価格変動率のことです(原資産の変動の大きさの度合い。価格変動が大きければ高くなり、価格変動が小さくなれば低くなります)。

ボラティリティが高い(値幅が大きい)場合、「買い手」にとって、損失は限定的でありながら大きい利益が狙えるため価値が大きいといえます


逆に、ボラティリティが低いオプションは価値が小さいので価格が安くなるんです
また、「ボラティリティ」には大きく分けて2種類「ヒストリカル・ボラティリティ(HV)」と「インプライド・ボラティリティ(IV)」があります。
「ヒストリカル・ボラティリティ」とは、過去の値動きから算出した価格変動率(値動きの大きさ)のこと。

「インプライド・ボラティリティ」とは、(ブラック・ショールズモデルという特殊な計算を用い)市場で取引されるプレミアムから逆算した価格変動率(値動きの大きさ)のこと。
原資産の価格、権利行使価格、SQ日までの時間、金利・配当を考慮し、プレミアムから逆算した値がIVです。IVは、投資家が予測している今後の原資産の変動の大きさの度合いといえます。

IVが高くなるとオプションの価格は上がり、IVが下がるとオプションの価格は下がります
(ボラティリティは、証券会社のオプション取引の取引画面などで自動的に計算して表示されます)。

プレミアムの変化(4つのギリシャ指標)


(4つのギリシャ指標は、証券会社のツールなどで確認できます)

「デルタ」とは、原資産の価格が「1円」動いたときに「プレミアム」がいくら動くのか?を示す指標(コールならば正の、プットならば負の値)。
(プレミアムの影響度合いを見るもので、「デルタ」が高い場合は、原資産の変動によってプレミアムが大きく動く可能性があり、「デルタ」が低い場合は、プレミアムの動きは小さいと見ます)。

「ガンマ」とは、原資産の価格が「1円」動いたときに「デルタ」がいくら動くのか?を示す指標(常に正の値でATMで最大)。
「ベガ」とは、ボラティリティが変化(原資産のIVが「1%」変化)したときに「プレミアム」がいくら動くのか?を示す指標(常に正の値でATM付近で最大)。
(SQ日までの日数が長いほどベガは大きくなる)。
「セータ」とは、残存時間の変化(満期日までの日数が「1日」減った場合)に対して「プレミアム」がいくら減少するのか?を示す指標((原資産が変わらなければSQ日に近づくほど権利行使できる確率が少なくなるため)常に負の値)。
(「日経225オプション」の場合、日経平均株価に変動がなくても、タイムディケイは日々起こるため「売り手」に有利になります)。
「プレミアム」に影響を与える最大の要因は「デルタ 」と「ガンマ 」です(つぎに「ベガ 」「セータ 」とつづきます)。


複雑なので、またの機会にして…ここまでのことをまとめましょう
まとめ
- プレミアムは「本質的価値」と「時間的価値」という2つの価値から構成されている
- プレミアムは、「本質的価値」である原資産の価格、権利行使価格と「時間的価値」であるボラティリティ(価格変動率)、権利行使期日(SQ日)までの時間、金利(金利や配当)をもとにして計算される
- 本質的価値は、損益の観点からみると「イン・ザ・マネー(ITM)」「アット・ザ・マネー(ATM)」「アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)」の3つに分けられる
- 時間的価値は、将来の価格変動によってオプションの価値が高まるかもしれないという期待感のことであり、現在の「プレミアム」から「本質的価値」を差し引いたものと考えることができる
- 満期日までの時間が長ければ長いほど、(原資産の)価格が大きく動く可能性があるので期待感が大きくなり、時間的価値は大きくなる(満期日には、オプションの時間的価値はゼロになる)
- 時間的価値は、はじめはゆるやかに減少していき、満期の直前になると急激に減少するという特性(タイムディケイ)があるので、買い手にとってはリスクとなり、売り手にとっては有利になる
- 時間的価値を決める要素のひとつである「ボラティリティ」には「ヒストリカル・ボラティリティ(HV)」と「インプライド・ボラティリティ(IV)」がある
- オプション取引には、プレミアムの変化を予測するための4つのギリシャ指標「デルタ」「ガンマ」「ベガ」「セータ」がある
- オプション取引はオプション同士、または、先物とオプションを組み合わせることなどによって、幅広い戦略をとることができる

先物取引と同様に実際にオプション取引をしなくても、仕組みを知ることで、現物の投資にも役立つと思います。
つぎの「株基礎㉗」では「先物取引・オプション取引の基本と確定申告」について学びますよ^^
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